消費者契約法 解説

ホーム
スタッフ紹介
取扱分野
ご相談
費 用
法律Q&A
地 図
 

ホーム > 法律Q&A >
消費者契約法 解説

 消費者契約法

昨年4月28日に成立した「消費者契約法」は,今年4月1日から施行となりました。
この法律は,その目的において,消費者と事業者との間に,「情報の質及び量並びに交渉力の格差」があることを前提とし(1条),消費者に自己責任を求めることが適切でない場合には,契約締結過程及び契約条項に関して,消費者が契約の全部又は一部の効力を否定することができるようになりました。
以下この法の概要とポイントを説明していきます。


【目次】
背景
従来の対応とその限界
消費者契約法の概要
1. 適用範囲
2. 問題となるような事例
3. 不適切な勧誘行為
1) 重要事項について事実と異なることを告げたこと
2) 不確実な事項につき断定的判断を提供すること
3) 消費者に不利益となる事実を故意に告げないこと
4) 当該事業者が,その住所又はその業務を行っている場所から退去すべき旨を意思表示したにもかかわらず退去しないこと
5) 当該事業者が,勧誘している場所から消費者が退去する旨の意思表示をしたにもかかわらず,消費者を退去させないこと
4. 不当条項
5. 注意点
6. おわりに

【背景】

本法成立の背景としては

(1) 消費者生活センター等に寄せられた販売契約等,トラブルに関する相談件数が,ここ10年間で3倍以上に増加したこと

(2) 政府の規制緩和の流れをうけて,市場参加者(消費者と事業者)が守るべきルール作りが必要となったこと,があげられます。

▲ページの先頭へ
【従来の対応とその限界】

消費者が被る様々なトラブルに対し,従来は,主として民法・商法により解決を図るよりほかはありませんでした。しかし,民法には

(1) 詐欺・強迫・錯誤の規定の要件が厳格であり,適用が困難であること

(2) 民法の規定の多くは任意規定であるから,特約によって排除できること

(3) 公序良俗,信義則といった一般条項ではあいまいでわかりづらいこと

といった限界があり,消費者にとって十分な解決を図れるものではありませんでした。また,個別法による対応ということも考えられますが,私人間の権利義務関係に直接効果をもたらさないものが多いとされています。


【消費者契約法の概要】

1. 適用範囲

「事業者」とは,法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいい,「消費者」とは,上記を除いた個人であると定義されています(第2条)。

労働契約を除き(第12条),消費者が事業者と締結した契約の全てが適用対象となります。

また,ここでいう「事業」とは,「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」のことを指しますが,「事業性」については,単に同種の行為の反復継続や利益の利益の存在によって判断するものではなく,それらをはじめとして,契約の段階における事業者の意図などの諸々の要素を含めて,全体として事業とみなすことが適当であるか否かにより判断されるものと考えられます。

▲ページの先頭へ
2. 問題となるような事例

「内職商法」

ダイレクトメールなどを用い,簡単な作業で高収入を得られるといったキャッチフレーズで希望者募り,内職ための材料や機械を高い金額で購入させるが,購入者は,その材料や機械を使って仕事をしても,技術不足等の理由をつけられて,もともと買い取るつもりがない業者に製品の買い取りを拒否され,収入を得ることができず,結局損をさせられるという商法のこと。

まず「内職契約」自体,一般的には労働法上における労働契約ではなく,民法上における請負契約であることから,内職商法は本法の適用対象となります。

また,内職の請負人が本法に規定する「事業者」となるか,それとも「消費者」となるかが問題となるが,当該契約の目的が,内職のための材料や機械を高い金額で購入することにある場合には,この契約は「事業のため」の契約ではないこととなるため,本法における「消費者」に該当し,本法の適用範囲に入ると考えられます。

しかし,「事業性」の判断基準というのは,先に述べたように,単に内職の回数や利益の存在によって判断するものではなく,それらをはじめとして,契約の段階における事業者の意図:

(本当に内職をさせる意図があったのか,それとも単に内職をさせることを口実にして内職のための材料や機械を高い金額で購入させる意図だったのか。前者であると認められた場合には,本法の問題ではなく債務不履行の問題となります。)

などの諸々の要素を勘案して総合的に判断すべきであります。

例:

*「事業者」に該当すると思われるもの: フランチャイズ契約
*「消費者」に該当すると思われるもの: モニター商法

▲ページの先頭へ
3. 不適切な勧誘行為

消費者契約締結の際の,以下の不適切な勧誘によって消費者が誤認・困惑して契約を締結した場合には,消費者は契約を取り消すことができます。

1) 重要事項について事実と異なることを告げたこと。(不実告知)(第4条1項1号)

2) 不確実な事項につき断定的判断を提供すること。(第4条1項2号)

3) 消費者に不利益となる事実を故意に告げないこと。(第4条2項)

4) 当該事業者が,その住所又はその業務を行っている場所から退去すべき旨を意思表示したにもかかわらず退去しないこと。(第4条3項)

5) 当該事業者が,勧誘している場所から消費者が退去する旨の意思表示をしたにもかかわらず,消費者を退去させないこと。(第4条3項2号)


以下,具体例。

1) 重要事項について事実と異なることを告げたこと (不実告知)

■ 魚屋さんの店頭で「新鮮だよ」と言われたので魚を買ったが,たいして新鮮であるとは思えなかった。 → ×

「新鮮である」と告げることは,主観的な評価であって,客観的な事実により真実又は真正であるか否かを判断することができない内容であるので,「事実と異なること」の告知の対象にはならない。

▲ページの先頭へ
「ハーバービュールームに泊まる香港4 日間」というツアータイトルに魅力を感じ,ツアーに申し込んだ。旅行代理店での説明でもハーバービュールームを手配するとのことであった。しかし,実際にホテルに行ってみると,窓からは街の景色しか見えず,海は全く見えなかった。 → ×

「ハーバービュールームに泊まる」ということは債務の内容になっていると考えられる。したがってこの事例は債務不履行の問題であり,「事実と異なること」を告げる行為には当たらない。


■ 新聞の折込チラシを見て築5 年の中古の一戸建て住宅が気に入ったので,業者から「築5年である」旨の説明を受けて,売買契約を締結した。念のため登記簿を調べてみると,実際には築10年であることが判明した。 →

重要事項(経過年数)について,真実と異なることを告げている(築5年と告げたこと)ので,不実告知にあたり,取消しが認められる。


■ 「当センターの派遣する家庭教師は東大生です。」と勧誘されたが,当該家庭教師が東京大学以外の東京○○大学の学生であった。 →

「東大生」という略称は一般に東京大学の学生を意味するものであり,東京大学以外の東京○○大学の学生を「東大生」と告げることは,重要事項(家庭教師の出身大学)について,「事実と異なることを告げること」にあたるので,不実告知にあたり,取消しが認められる。


2) 不確実な事項につき断定的判断を提供すること

■ 過去の数値データ等を示しながら「今まで元本割れしたことはないので,今後も元本割れしないだろう。」と言われたので金融商品を契約したが,元本割れした。 → ×

「今後も元本割れしないだろう。」と告げることは断定的判断を提供することにはあたらないため,取消しは認められない。

▲ページの先頭へ
3) 消費者に不利益となる事実を故意に告げないこと

■ 「眺望・日当たり良好」という業者の説明を信じ,隣接地が空き地である,中古マンションの2 階の一室を買った。しかし半年後には隣接地に建物ができ,眺望・日照がほとんど遮られるようになった。業者は隣接地に建設計画があると知っていたにもかかわらずそのことを告げていなかった。 →

消費者の利益となる旨([ 例えば,隣接地が空き地であって] 眺望・日当たり良好)を告げ,不利益となる事実(隣接地に建物ができて眺望・日照が遮られるようになること)を故意に告げていないので,取消しが認められる。


4) 当該事業者が,その住所又はその業務を行っている場所から退去すべき旨を意思表示したにもかかわらず退去しないこと

■ 中1 の子供用の教材の押し売り。夜中の12 時半まで説明を聞かされ,「子供が寝るので帰ってください」と言っても帰らず,仕方なく高額な教材を購入してしまった。 →

消費者が,その住居から退去すべき旨の意思を示した(「子供が寝るので帰ってください」と言ったこと)にもかかわらず,事業者が退去しなかったので,取消しが認められる。


5) 当該事業者が,勧誘している場所から消費者が退去する旨の意思表示をしたにもかかわらず,消費者を退去させないこと

■ 営業所で13 時から24 時まで勧誘され,頭がボーっとして帰りたくて契約書にサインをしてしまった。帰りたいと言ったのに帰してくれなかった。普通の状態だったら契約はしなかった。 →

消費者が勧誘の場所から退去する旨の意思を示した(帰りたいと言った)にもかかわらず,事業者が消費者を退去させなかったので,第4 条第3 項第2号の要件に該当し,取消しが認められる。

▲ページの先頭へ
4. 不当条項

消費者が締結した契約において,消費者の利益を不当に害する一定の条項の全部または一部が無効となります。

1) 債務不履行,不法行為,瑕疵担保責任をすべて免除する免責条項。事業者の故意・重過失を条件とした責任の一部免除条項(第8条)。

2) 解除に伴う損害賠償の予定が平均的損害を超えるものは,超える部分(第9条1項)。

3) 支払期日経過による遅延損害金の予定が年14.6パーセントを超えるものは,超える部分(第9条2項)。

4) 民法・商法その他の法律を適用する場合と比べ,民法の信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)。


以下は具体例。

○ いかなる理由があっても一切損害賠償責任を負わない。
○ 事業者に責めに帰すべき事由があっても一切損害賠償責任を負わない。
○ 事業者に故意または過失があっても一切損害賠償責任を負わない。

→ 上記3条項は,損害賠償責任の「全部を免除する条項」であるため,第8 条第1 項第1号,第3号に該当し無効となる。

条項が無効となった結果,損害賠償責任については,何の特約もなかったこととなり,事業者は民法等の原則どおり損害賠償責任を負うこととなる。

▲ページの先頭へ
× 事業者に故意または重大な過失がある場合を除き,損害賠償責任は○○円を限度とする。

→ この条項は,「一部を免除する条項」であるが,事業者に故意または重大な過失がある場合を除外しているため,第8 条第1 項第2号,第4号には該当せず,無効とはならない。


5. 注意点

■ 取消権の行使期間

消費者が契約を取消したいと思ったときは,騙されたと気づいてから6ヶ月以内,または当該消費者契約締結の日から5年以内に事業者にその意思を伝えなければなりません。

■ 契約と直接関係ない事項で事業者側に問題があっても契約を取消すことはできません。

■ 誤認や困惑の要件が限定されている(2不適切な勧誘行為参照)ので,それ以外の事由(例えば,単に「説明がなかった。」)では取消すことができません。

■ 契約締結の際の,事業者の情報提供義務は努力義務にすぎません。
契約締結の際,疑問な点はあいまいにせず,事業者の方に確かめるようにしましょう。

■ 万一トラブルが発生してしまった場合に備え,特に高額な契約の場合には事業者に契約書の作成を依頼しましょう。

締結の際,事業者のいったことはテープや紙に留めておくと,証拠として役立ちます。契約書は紛失しないように保管しておきましょう。

▲ページの先頭へ
6. おわりに

消費者契約法は,悪徳商法によるトラブルが絶えないなか,消費者契約に関する総合的な法律として,製造物責任法と並ぶ2大柱として成立しました。この法律により,今まで「泣き寝入り」せざるを得なかった弱者たる消費者の救済が可能になると考えられています。

しかしながら,問題となる勧誘行為等,各条項の解釈については,見解が分かれている部分もあり(本HPの事例は経済企画庁の事例集に基づいています。),実例の集積を待つばかりです。

また,地方自治体の消費生活センターやADRが強化・充実されることにより,本法が実効性ある法として私たち消費者に普及・活用されることを願っています。


【参考資料】
消費者の窓 http://www.consumer.go.jp/ 2001/5/30更新
経済企画庁「逐条解説 消費者契約法」 2000/9
菊井康夫「消費者契約法の概要と問題点」消費者問題ニュースNo.80 2001/1/12


(2002/2/12掲載)

▲ページの先頭へ


ホーム | スタッフ紹介 | 取扱分野 | ご相談 | 費 用 | 法律Q&A | 地 図

Copyright (C) 古田&アソシエイツ法律事務所 All Rights Reserved.