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| 新会社法による特別清算について解説 (2006/5/17) |
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はじめに 平成18年5月1日に施行された会社法は,これまで利用されることが少なかった特別清算について,管轄に関する特例の容認や協定可決要件の緩和など,制度の利用促進につながる重要な見直しを行っている。 以下,まず特別清算の目的や他制度との関係を述べ,その後,手続の流れに沿って,会社法により見直しが行われた部分などについて述べることとする。 特別清算の目的・他制度との関係 法人である株式会社が消滅するには,株主総会の特別決議により解散し,その法人格を消滅させることが必要になる(会社法471条3号,309条2項11号)。しかし,継続して存続した株式会社には,資産もあれば負債もあるため,法人格が消滅する前に,これらを「清算」する必要がある(会社法475条)。そのため,株式会社の法人格は,解散により直ちに消滅するのではなく,「清算」を行うために,「清算」が終了するまで存続する(会社法476条)。 「清算」とは,文字通り,「今までの貸し借りを整理して,後始末をつけること」とである。“貸し”,つまり資産が,“借り”,つまり負債を上回っている場合には,その資産で負債を弁済し,残った資産を株主に分配すれば(これを「残余財産の分配」と言う。),「清算」は終了する。この債務超過でない場合の清算手続は,特別清算との対比で,「通常の清算」と呼ばれている。 しかし,負債が資産を上回る場合(債務超過の場合)には,負債を圧縮しない限り,「清算」はできない。負債を圧縮するためには,債権者に任意に債務免除等してもらうか,法的拘束力をもって強制的に圧縮する必要がある。このような場合の「清算」の制度が,特別清算である。 特別清算開始の原因は,「債務超過の疑いがあること」である(会社法510条)。支払不能または債務超過を開始原因とする破産手続(破産法16条)と異なり,客観的に債務超過でなくとも,その疑いがある場合には,特別清算は開始される。 仮に,特別清算開始後に,それが「疑い」に過ぎず,客観的に債務超過でなかったことが判明した場合には,特別清算の必要がないとして,特別清算は終了し,通常清算の手続がとられる(会社法573条2号)。他方で,客観的に債務超過であり,かつ協定の見込みがない場合や,協定が否決された場合には,資産と負債をゼロにする「清算」が不可能であるため,裁判所の決定により,特別清算から破産手続に移行する(会社法574条)。 事業再生としての利用方法 このように,特別清算は,株式会社の解散及び消滅を前提にしており,事業再生を目指す株式会社そのものに利用する制度ではない。事業再生という観点からすると,特別清算は,ノンコア事業を営む等企業グループにとって必要性が乏しく,採算がとれない子会社等の関連会社を整理し,企業グループとしての再生のために利用されることが多い。 例えば,近時でも,株式会社産業再生機構の支援を受けていたミサワホールディング株式会社の孫会社で,ミサワホーム株式会社の子会社であるミサワファイナンス株式会社について,同社の事業が金融業というノンコア事業であったため,解散のうえ特別清算開始の申立てを行い,平成18年3月22日,東京地方裁判所から特別清算開始決定を受けている。 清算人 清算をする株式会社(清算株式会社)には,1人以上の清算人が置かれる(会社法477条1項)。取締役が清算人になることもできるが,実務では,手続の公正性の観点から,株主総会の決議により(会社法478条1項3号),第三者である弁護士が選任される場合が多い。 株式会社は解散により清算手続に入るが,通常の清算ではなく,特別清算を利用するためには,裁判所に対して,特別清算開始の申立てを行う必要がある(会社法510条)。特別清算開始の申立ては,債権者,清算人,監査役又は株主が行うことができ(会社法511条1項),清算人は,清算株式会社に債務超過の疑いがある場合には,特別清算開始の申立てを行うことが義務付けられている(会社法511条2項)。つまり,債務超過の疑いがある場合には,通常の清算ではなく,特別清算をとることが強制されているのである。 管轄についての特例 旧商法下の特別清算においては,特別清算事件は,株式会社の本店所在地の地方裁判所が管轄するものとされていた。しかし,この原則によると,特別清算を子会社等の関連会社の整理に利用する場合に,管轄する裁判所が関連会社ごとに異なることとなり,親子会社等の事件の一体処理が不可能になる。 そこで,会社法は,一体処理を可能にするため,親会社について特別清算事件,破産事件,再生事件または更生事件が係属している場合に,子会社等の関連会社は,親会社の事件が係属している裁判所に対しても,特別清算開始の申立てを行うことができることとした(会社法879条)。 これにより,いわゆる持株会社Aからすれば,採算が取れない子会社Bとその子会社C(持株会社からみれば孫会社)とを整理する場合に,子会社Bの特別清算事件等が継続する裁判所に対して,孫会社Cの特別清算開始を申し立てることができ,同一の裁判所で一体的に処理することが可能になる。 裁判所による監督 債権者への全額弁済が行われる通常の清算と異なり,特別清算は,手続の公正性及び債権者間の公平を確保するため,裁判所が監督することになっている(会社法519条)。旧商法では,通常の清算においても裁判所の監督の下に行われたが,会社法では,通常の清算については,裁判所の監督の制度を廃止している。 清算人は,裁判所の監督のもと,現務の結了,債権の取立て及び債務の弁済,残余財産の分配の職務を行うことになる(会社法481条)。 債権申出の公告(解散公告) 清算株式会社は,解散をした場合には,遅滞なく,債権者に対し,一定の期間内(2ヶ月を下ることはできない。)にその債権を申し出るべき旨を官報に公告しなければならない(会社法499条1項)。いわゆる「解散公告」と呼ばれているもので,旧商法では,少なくとも3回の官報による公告が要求されていたが,合理性に乏しいため,会社法では,迅速・簡素な清算の実現の観点から,1回で足りるものとしている。 なお,公告に加え,知れている債権者に対しては,各別にこれを催告しなければならない(会社法499条1項)。 当該期間内に申出をしない債権者(上記の知れている債権者を除く。)は,清算手続から除斥される(会社法499条2項,503条1項)。除斥された債権者は,他の債権者に弁済された後,なお残余財産がある場合に限り,弁済を請求することができるに過ぎない(会社法503条2項)。特別清算においては,ほぼ100%が債務超過であるから,残余財産が生じる可能性は皆無と言うことができ,除斥された債権者が弁済を受けられる可能性は殆どない。そして,債権者集会での議決権もないため,招集する必要はなく(会社法549条1項),協定の対象にもならない。 特別清算の終了 裁判所は,特別清算が結了したときに,特別清算終結の決定をする(会社法573条1号)。 実務では,協定によらずに,清算人が清算株式会社の資産を換価し,債権者がこれに見合った一定額の弁済を受けた上で残債権額を放棄することによって,清算株式会社の資産及び負債ともゼロにして特別清算を結了させることが多い。 このように,特別清算の終了のためには必ずしも協定による必要はなく,清算株式会社は,特別清算終了のために必要がある場合に,協定案を作成し,債権者集会に対し,協定の申出をすることができるのである(会社法563条)。 債権者集会において協定を可決するには,次の?と?の同意のいずれもがなければならない(会社法567条)。 ?出席した議決権者の過半数の同意 ?議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意 旧商法は,?の要件について,議決権の総額の4分の3以上の議決権を有する者の同意を要求していたが,協定可決要件を緩和して特別清算を利用しやすくするために,会社法は,これを3分の2に緩和している。 なお,協定の見込みがない場合や,協定が否決された場合には,基本的に裁判所の決定により,特別清算から破産手続に移行する(会社法574条)。 企業グループの信用毀損を防ぐために 特別清算により子会社等の関連会社を整理し,当該企業グループの再生を図る場合に,その信用を毀損させないことが重要になる。そのためには,親会社が,子会社等の関連会社に代わって弁済するか,これに資金を貸付けて各債権者に弁済するなどして,各債権者の債権額の全額を弁済することが不可欠になる。 このように親会社が弁済等すれば,親会社が唯一の債権者となることも可能であり,これが可能となれば,親会社との間で個別的な和解や協定を可決させて,容易かつ迅速に特別清算を終了させ,当該親会社は,下記の税務上のメリット享受することができるのである。 特別清算における税務 子会社等の関連会社を整理する場合に,単に親会社が債務免除を行うと,寄付金として債権者である親会社に課税される可能性がある。 これに対し,特別清算を利用した場合には,特別清算開始の申立ての事実をもって,回収不能か否かを問わず,債権額の50%相当額について貸倒引当金として損金に算入することができる(法人税法52条1項,法人税法施行令96条1項3号)。 そして,特別清算に係る協定の認可による切捨額や,合理的な基準により定められた債権者集会の協議決定による切捨額などについては,貸倒れとして損金の額に算入されることになる(法人税基本通達9-6-1)。 特別清算を利用できるのは株式会社のみ 特別清算が利用できるのは,株式会社だけである。合名会社,合資会社及び合同会社には利用することができない。 会社法の施行により,「有限会社」は廃止されたが,既存の有限会社は,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(整備法)により,商号中に「有限会社」という文字を用いたままで,会社法の規定による株式会社として扱われる(整備法2条,3条)。この株式会社は「特例有限会社」と言われている。 特例有限会社については,特別清算の制度を利用することはできない(整備法35条)。このため,特例有限会社については,債務超過の疑いがある場合には,特別清算ではなく,破産手続によるほかない。 もっとも,特例有限会社がその商号を変更して(「株式会社」の文字を用いて),通常の株式会社に移行することは可能であり(整備法45条),商号変更後の株式会社については,特別清算の制度を利用することができる。 会社法施行日との関係 株式会社が会社法の施行日(平成18年5月1日)より前に解散していた場合には,会社法が規定する特別清算ではなく,旧商法上の特別清算の規定が適用される(整備法108条)。特別清算の申立をした日ではなく,解散の決議をした日が基準となっている。そのため,協定可決要件の緩和など会社法上の特別清算が利用できるのは,会社法施行日以降に,解散の決議をした株式会社ということになる。 |